引き算

30 6月

ビジネスホテルの客室に必要なものと言えば、ベッド、ライティングデスク、チェア、テレビ、冷蔵庫と、実に様々な調度品や備品があります。この中から、ベッドを無くしてしまったホテルがあります。埼玉県にある「ホテルグリーンコア本館」です。長期滞在のビジネスマンが多かったこのホテルでは、もともとシングルベッドを設置していました。しかし利用客の快適性を考えて、客室の大胆な改装を行いました。ベッドを撤去し、布団を用意。カーペット敷きの床をフローリングに変更。ライティングデスクは座卓に変えて、掘りごたつ式に。長期滞在の宿泊客にとっては、改装前より使い勝手が良くなり、自宅のようにくつろげると評判に。また、このホテルは週末の入込が課題でしたが、改装後は幼児連れのファミリー客が急増したと言います。幼児はベッドで添い寝するより布団の方が安心、というニーズがあったのです。これにより、平日も週末も稼働率が上昇し、業績が非常に好調であるそうです。
この話を知って、思い出したのはアップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズのことです。彼は製品のシンプルさを保つために徹底的に引き算をしました。「必要かもしれない」レベルのものでも、本当に必要だと確信できないものについては切り捨て、間引きをしたのです。引き算することで、本当に必要な価値が磨かれ、引き立つことを目指していたのです。
我々はビジネスにおいて、どうしても「足し算思考」をしてしまいがちです。料理なら「この食材を加えて、この飾りつけも施して」。宿泊プランなら「この特典とこのサービスも付け足して」のようになりがちです。たまには「足し算」をやめて「引き算」をするとどうなる、考えてみるのも面白いかもしれません。